小型精密機器用ジャーナル軸受を対象とし、モータの起動、停止時に軸受すきま内に発生する摩耗粉が軸受の振れ精度に及ぼす影響に関して調査した。理論解析では、摩耗粉の存在によって圧力分布がどのように変化するかを調べるため、摩耗粉が低速で移動するときには固液二相流理論を、高速で移動するときには移動方向へのスクイーズ効果を含むレイノルズ方程式をジャーナル軸受系に適用した。その結果、1粒子の摩耗粉が軸受の振れ精度に及ぼす影響は、軸受の偏心率に換算して10^<-13>のオーダであることが分かった。さらに、軸受すきま内での摩耗粉の発生が軸受の焼付き現象を招くことから、軸受に幾種類かの表面処理を施し、それらの耐摩耗性を実験的に調査した。中でも、近年、エンジン内ピストンなどで注目を集めているMoS_2ショット処理技術を施した軸受は、DLCコーティングやMoS_2スパッタリングコーティングを施した軸受に比べて低摩擦特性を発揮し、また、基礎実験装置を用いて起動一停止繰り返し試験を行ったところ、未処理軸の10倍もの耐摩耗性を発揮することが分かった。MoS_2ショット処理軸受が低摩擦特性、ひいては耐摩耗特性を発揮する理由をX線回折、EPMA分析などを用いて調査したところ、MoS_2粉を高圧空気で吹き付ける加工工程において、MoS_2のC軸配向性が顕著になり、また、MoS_2粒子がSUS母材に機械的に埋め込まれることによって密着性のよい数μmの層を表面に形成するためであることが分かった。
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