近年、OA、AV機器を中心とする小型精密機器において更なる高性能化が求められる中、それらのスピンドル支持に流体動圧軸受が採用される割合が高くなってきている。しかし、モータの起動/停止時にシャフトとスリーブが接触し、それによって軸受すきま内に摩耗粉が発生するが、そのメカニズムや発生量は未だ不明点が多い。そこで本研究では、比較的軽負荷な小型真円型ジャーナル軸受を対象とし、基礎実験装置を用いてモータの起動/停止試験を行った後、シャフト/スリーブ間に発生する摩耗粉の定量を行った。実験手法として、(1)軸受すきまの異なる幾組かのシャフト/スリーブの組み合わせに対してそれぞれストライベック曲線を描き、軸受の作動状態が混合潤滑状態から流体潤滑状態に遷移する回転数を調べる、(2)それぞれの組み合わせにおいて起動/停止繰り返し試験を行う、(3)発生摩耗粉量を電気抵抗法によって測定する、(4)シャフト表面の粗さの変化をレーザ顕微鏡で調べる、を採用し、その手順に沿って実験を行った。その結果、混合潤滑状態から流体潤滑状態になるまでの遷移回転数が高いシャフト/スリーブの組み合わせほど多くの摩耗粉が発生する、すなわち、摩耗粉の発生には、起動/停止時の静摩擦よりもむしろ境界潤滑状態下での動摩擦のほうがより大きく影響することが分かった。また、モータ停止までの起動/停止繰り返し回数には、発生摩耗粉量よりもむしろ、大粒の摩耗粉の発生が影響を及ぼすことが分かった。
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