本研究は、表面形状制御により流体抵抗を軽減させることを最終目標として、大規模剥離流を伴う代表例として、ゴルフボールのディンプルによる低抗軽減メカニズムの解明を目指すものである。剥離流れの解析においては表面形状が重要な役割を果たすため、特にディンプルが剥離に及ぼす影響について検討している。 平成14年度は、数値解析アルゴリズムの高効率化ならびに静止しているゴルフボール周り流れの計算およびその精度検証を行った。まず、ゴルフボール周りの剥離流の数値解析アルゴリズムを高効率化するために、現有のアルゴリズムの改良を行った。現有アルゴリズムでは、計算精度を向上させようとすると計算コストが膨大となってしまう。そこで、計算アルゴリズムを並列化に対応させるため、前処理の段階で高精度計算に耐えうる計算格子を生成し、それを並列計算に用いるCPUの数に領域分割した。これにより、非並列計算と同程度の計算精度を維持しながら計算効率を向上させることができた。 これらのアルゴリズムによって領域分割されたデータを基に、東北大学流体科学研究所所有のスーパーコンピュータを用いて大規模剥離流の計算を行った。計算対象としては、まず静止しているゴルフボール周りの流れを取り上げた。様々実験条件での一様流中に置かれたゴルフボールに働く空力係数などを解析して実験結果との比較を行った結果、定性的な一致は見られたが空力係数の定量的な一致にはアルゴリズムの更なる精度向上が必要である。 ゴルフボール周りの流れ場においては、特にディンプルの果たす役割が大きくなる。そこで、現在は格子解像度を向上させ、球面上のディンプル要素からどのような流れ構造が形成されるのかについての計算を行っている。さらに、流れ構造を詳細に調べることにより、ディンプルが抵抗軽滅に及ぼす影響を詳細に調べる予定である。
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