研究概要 |
輻射によるエネルギー輸送を伴う流体現象は,高強度レーザーによる慣性核融合プラズマや、宇宙機の大気突入時における極超音速流れ場のような強い衝撃波を伴う高温気体において重要な研究課題である.このような輻射流体現象の解析には,少なくとも圧縮性の流体現象,輻射の輸送現象,輻射の放射・吸収を同時に扱わねばならず,これらを結合した数値計算による研究が必要となってくる. 本研究では,輻射流体現象が輻射と流体という連成系を動的に最適化することで,精度を保ちながら計算時間を短縮する,非定常問題を対象とした計算システムを構築することを目的としている.本年度は,連成系を構成するそれぞれのオブジェクトに対して,計算レベルを動的に操作できるように厳密な解法から近似解法を構築することが目的であった.特に,輻射の放射・吸収計算を近似的に扱う場合,スペクトルをどのように配置するかが問題となるが,連続スペクトルと線スペクトルを分けて扱い,それぞれに適した分割数で配置することで,ある程度の精度で放射・吸収スペクトルが再現できることが示された. また,従来の輻射流体計算手法の妥当性を調べる上でも,具体的な事象に対する計算を行っていった.慣性核融合で重要な課題である流体力学的不安定性の種となる初期擾乱刻印を,核融合ターゲットから放射される軟X線を用いて抑制するスキームについて研究を行った.その結果,低密度フォームと高Z物質を付加したターゲットでは,初期擾乱刻印が抑制されることを示した.さらに,輸送計算の並列化効率を上げる手法や,輻射輸送が降着円盤の形成に及ぼす影響についても研究を行った.
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