研究概要 |
輻射によるエネルギー輸送を伴う流体現象は,高強度レーザーで生成されるプラズマや,宇宙機の大気突入時における極超音速流れ場のような高温気体において重要な研究課題である.このような輻射流体現象の解析には,流体現象や輻射現象を同時に扱わねばならず,これらを結合した数値計算による研究が必要である. 本研究では,輻射流体計算をなす要素計算を効率化することで,精度を保ちながら計算負荷を削減する計算システムを構築することを目的とした.昨年度の研究において,輻射の放出・吸収スペクトルを波長空間で離散化する際の波長点配置方法について調査を行ったが,本年度ではそれをさらに進めて,より少ない波長点数で精度を下げずに輻射流体計算を行う手法について検討を行った.具体的には,線スペクトルに対してそれぞれ決まった波長点数を配置し,スペクトルの裾野を捉えるための最低値をどこまでにするかをパラメータとすることで,輻射流体計算に適したパラメータを探した.地球大気に超軌道速度で突入する宇宙機周りの流れ場を想定した場合,通常詳細な計算には約百万点の波長点数が必要であると言われているが,本研究で提案した手法を用いると数千点の波長点数で輻射流体計算ができることがわかった. また,三次元輻射輸送計算の効率化についても検討し,光線追跡法で輸送計算を行う際の新しい光線配置方法を提案した.具体的には,従来用いられてきた等角度配置の代わりに,ガウスの求積法に基づく離散座標で配置する方法を提案した.これにより,高い精度で立体角積分を行うことができ,光線数カミ大幅に削減できることを確認した. さらに,具体的な輻射流体力学的事象についても研究を行い,高Z物質をドープしたプラスチックを高強度レーザー照射により加速すると,二段のアブレーション面が形成され,X線輻射によって形成されるアブレーション面で流体力学的不安定性が低減できることを確認した.
|