研究概要 |
三次元一様等方性乱流場より発生する流体音の音響学的類推(アナロジー)による解析に先立って,まずは典型的な流れ場による音の直接数値計算(DNS)の結果を用いて,遠方音場の理論式が定量的な精度を持つか検証を行った.圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式のDNSによって微小な音圧変動を捉えるために,空間微分に六次精度Pade型コンパクト有限差分法,時間発展に四次精度Runge-Kutta法という,非常に精度の高いスキームを用いている.遠方計算境界には,特性線の方法を拡張した無反射境界条件を課している.格子幅を変更した多くの試計算を行っており,十分に信頼できる数値結果が得られている.一様流と物体(円柱,角柱,翼型)の相互作用により発生するエオルス音,および渦構造と翼型の相互作用により発生する音の圧縮性DNSによる解析の結果,以下のことが明らかとなった.低マッハ数でもドップラー効果の影響が顕著に現れるため,Lighthillの音響学的類推に基づいたCurleの一般的な近似式では,予測精度が不十分である.また,比較的遠方まで影響が残る,音波としては伝播しない擬音成分についても同様である.そこで両者を考慮した適切な近似法を提案し,導かれた理論式を用いれば比較的近傍まで非常に良い精度で音場を予測できることを示した.複数の渦構造が追い越し運動する際に発生する渦音に関しても,ドップラー効果の影響が強く現れるためにMoring-Kambeの式による予測は困難となっているが,同様の手法により予測精度の改善が可能であることが示唆される.音響学的類推を用いて,乱流による遠方音場を精度良く予測する手掛りが得られたと言える.
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