1.平板に接した二成分混合気体に誘起される熱ほふく流と拡散すべりについての、線形化ボルツマン方程式に基づく差分解析を行った。この結果を用いると、代表者が昨年度、同方程式により数値解析した平行平板間における混合希薄気体の流れの挙動を、低希薄度において補完できるが、それは来年度に行う予定である。 2.蒸気と非凝縮性気体との2成分混合気体中に置かれた球状凝縮相からの蒸発、またはそれへの凝縮による流れを、流れが遅い場合について、線形化モデル・ボルツマン方程式により調べた。その結果を、日本流体力学会年会2003(2003年7月28日〜30日、工学院大学新宿校舎)、および欧州力学会流体力学会議(2003年8月24日〜28日、トゥールーズ、フランス)にて発表した。 3.混合気体に対するボルツマン方程式と、そのいくつかのモデル方程式とを比較するため、分子衝突頻度および分子衝突による運動量・エネルギーの交換量に着目した比較方法を提案し、それを用いた数値的比較を行った。その結果を、第十七回数値流体力学シンポジウム(2003年12月17日〜19日、国立オリンピック記念青少年センター)で発表した。 4.剛体球分子ボルツマン方程式に対する差分計算法の高精度化を行った。気体が局所平衡に近い場合、速度分布関数を局所平衡分布とそこからのずれとの和で表すことで、同方程式の衝突項を線形積分項と非線形積分項とに分けて計算するスキームを開発した。前年度より解析してきた、平行平面凝縮相間の蒸気と非凝縮性気体との混合気体の挙動を、上記のスキームを用いることで、以前よりも小さな希薄度に対してまで精密な差分計算により解析した。その結果の一部を、図書「Modeling and computational methods for kinetic equations」(Birkhauser Bostonから出版予定)の第5章で発表した。
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