本年度は以下のような研究・発表を行った。 (1)平行二平板間の2成分混合希薄気体に生じる3種の流れ(ポアズイユ流・熱遷移流・拡散すべり流)について、流れが弱い場合に対し、線形化ボルツマン方程式(剛体球分子を仮定)の直接数値解析により調べた結果を、第24回国際希薄気体力学会議(2004年7月10日から16日、イタリア・バリ)にて発表した。 (2)上記の解析は、高精度の差分法によるものだが、ボルツマン方程式を直接扱うため計算負荷が非常に大きい。より広範囲のパラメータに対する結果や、様々な分子モデルの違いによる影響を調べるため、計算負荷の小さいモデル・ボルツマン方程式を使った解析を行った。これにより、剛体球分子とマクスウェル分子の場合に、様々な希薄度・成分濃度に対して、上記3種の流れの流量を即座に求めることのできるデータベースを作成した。 (3)蒸気と非凝縮性気体(蒸気とは別種の、蒸発・凝縮をしない気体)との混合気体中に、蒸気の凝縮相からなる揮発性の微粒子があるとき、この微粒子の周りの流れを線形化モデル・ボルツマン方程式に基づき解析した。背景の混合気体が、(a)一様流速を持つとき、(b)一様な温度勾配を持つとき、(c)一様な成分濃度勾配を持つとき、について調べた。これらの結果を組み合わせることにより、微粒子の熱泳動や拡散泳動の原因となる力を求め、微粒子の速度を求めることが出来る。なお(c)の結果は、先に(1)で記したものと同じ国際会議にて発表した。
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