研究概要 |
今年度は,まず実際の半導体製造工程で用いられるスピンコーティング装置を改良した実験装置を製作し,円盤には12inchのウェハを使用した.スピンコーティングへの旋回噴流の適応性を考慮するため,ウェハの回転で生じる気流の挙動を実験的に調査した.その方法には,油膜法による可視化を採用した.その結果,回転速度が2000rpm以上ではウェハ表面の油膜に筋が生じることが分かった.この筋は回転速度の増加に伴い,よりウェハ中心側で出現した.またその筋の本数は回転数に依らず30〜32本であった.この可視化結果は,スピンコーティングの際レジストの再付着を防ぐためにウェハ外縁より排気を行うが,その流量によらず,ほぼ同じ傾向を示した. これらの可視化実験の結果から,筋の出現半径位置および角速度に基づくレイノルズ数を算出したところ2.2〜2.5×10^5であった.この結果は,回転円盤上の境界層が層流から乱流へ遷移するレイノルズ数とよく一致しており,この筋はその遷移領域に出現した何からの流れ構造をもつ気流の軌跡だと推察される.これは,いわゆるエクマン螺旋渦として知られており,この筋が薄膜の一様性を妨げることが過去の研究で報告されている.実際のスピンコーティングではこの筋ができないよう回転数を制御しながら操作されている. このエクマン螺旋渦の発生メカニズムはいまだ未解明である.この解明のためには,ウェハ表面上の気流の計測が必要不可欠であり,旋回噴流の適用の観点からも非常に重要である.今後はこの詳細な気流計測に取り組んでいく予定である.
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