研究概要 |
超音速ノズルの工業的応用例として製鋼プロセスで用いられる上吹転炉用超音速ノズルがある.上吹転炉は溶融銑鉄の上方より高圧の酸素ガスを超音速ノズルから噴射し,不純物(過度の炭素・硫黄,燐など)を気体として除去して鋼の品質を調整する一般的な手法である.製鋼用上吹転炉では,銑鉄溶融液面に向けた噴射ノズルからの超音速酸素噴流が液面に衝突するときの全圧(ピトー全圧とよばれる)が大きいほど酸素が溶融銑鉄の中に深く浸入し,不純物の除去効率が高くなる.したがって製鋼用上吹転炉の効率を向上させるためには,超音速噴流のピトー全圧が流れ方向にできるだけ遠方まで維持され減衰しないような超音速ノズルシステムの開発が必要である. 大気中に噴出する超音速噴流についてはこれまで数多くの研究が行われ,ポテンシャルコア長さ,超音速域長さや噴流速度の減衰特性が明らかにされている.しかし,製鋼用上吹転炉の純酸素超音速噴流ように,高温の大気中に噴出する超音速噴流に関する研究はほとんど行われておらず,その特性は明らかになっていない.そこで,1500Kの高温大気中に設計マッハ数2.0のノズルから噴出する適正膨張噴流の数値シミュレーションを行い,超音速噴流の特性を調べた.その結果,1500Kの高温大気中に噴出する超音速噴流は,常温の大気中の場合に較べて噴流のポテンシャルコア長さが2倍以上になることが分かった.数値シミュレーション結果を詳細に調べた結果,その原因は周囲気体の温度が高い場合,噴流周囲の気体密度が小さくなるために噴流の混合領域の運動量が小さくなり,そのため,逆に噴流中心部の運動量はノズル出口の状態のまま下流まで維持されるためであることが明らかになった.
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