研究概要 |
適合直交格子による数値流体解析手法は,複雑形状問題に適用する上で多大な労力を要する格子生成を自動化できるものと期待されている。本研究では,適合直交格子のデータ管理に最も適していると考えられるツリー型データ構造により,メモリ効率がよく単純なアルゴリズムにより流体解析プログラムを実現できることを示した。具体的には,流体解析に必要な流束計算に必要な隣接格子の探索を「系譜」と呼ぶキーにより,従来は隣接格子を探索するのに一端ツリー構造を上層に向かって上ってから末端に降りてゆかなければならなかったのが,末端に向けて降りてゆくだけですむようになった。また,収束を加速させるために重要な陰解法を実現するためにはオーダリングと呼ばれるデータの並び替えが必要であるが,ツリー型データではこれを空間充填曲線の一つであるZ-orderingによって実現でき,かつ,それが非常にシンプルなアルゴリズムで実装できることを示した。さらに,これらの方法が非等方格子分割を行った場合でもそのまま適用可能であることも明らかになった。非等方格子分割は,格子を必要な方向にのみ分割する手法で,壁面に垂直な方向にのみ物理量勾配が大きくなる境界層を効率よく捉えるために不可欠な方法である。以上の成果については,ICCFD2において発表を行った。 先述の「系譜」というアイデアはツリー型データに位置情報を与えるという点でも意義が大きい。本研究ではこれを利用し,CADデータから自動で適合直交格子を生成するアルゴリズムも開発した。格子とCADデータの物体表面との公差判定にComputer Graphicsの分野で利用されているアルゴリズムを適用することにより,極めて高速で格子を生成できることが明らかとなった。これについては,第16回数値流体力学シンポジウムで発表し,現在,日本機械学会論文集に論文投稿準備を行っている。
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