研究概要 |
高強度材料として用いられる高分子液晶プラスチックの更なる高強度化を目指し,流動と磁場を併用した成型加工プロセスの研究を行った. まず,等方材料が温度変化によってネマティックへ転移する過程について2次元および3次元数値シミュレーションを行った.結果より,等方-ネマティック相転移の過程が,(1)ネマティック領域の発生,(2)ネマティック領域の成長,(3)配向欠陥構造の生成,(5)配向欠陥構造の再構成,(6)配向欠陥構造の消滅のプロセスを経ることが分かった.相転移過程で現れる配向欠陥構造の密度は無次元量R(分子場の短距離弾性力と長距離弾性力の比)に依存し,Rが高いほど配向欠陥構造の密度が高くなる. 次に,流動中における等方-ネマティック相転移についての2次元および3次元数値シミュレーションを行った.流動が無い場合と比較すると,配向欠陥構造の生成密度が低いことが確認された.流動の強さを表す無次元量であるEr(粘性力と長距離弾性力の比)が高いほど配向欠陥構造の生成密度は低くなり,Erがあるしきい値を超えると,配向欠陥密度は0となることが分かった.これは,無方向性である相転移現象に,方向性を有する外場である流動を印加することによって配向欠陥構造の生成が抑制されたためである. 以上の結果より,流動を用いることによって配向欠陥フリーの高分子液晶材料を実現可能であることを明らかにした.
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