圧電ファンの実用化へ向けた研究の取り掛かりとして、本年度は振動平板型ファンの設計手法確立を目標とした。このため、ファン性能として最も重要な送風量と、振動平板の寸法および振動状態との関係を明らかにすることを目的に風速測定実験を行った。初めに電磁式の加振機をアクチュエータとして、振動する平板によって周囲に誘起される空気流れを定温度型熱線流速計で測定し送風量を算出した。なお、実験は電子機器の冷却用というこのファンの使用目的を考慮し、上下間隔の狭い筐体内で行った。様々な条件下で実験を行い、得られた実験データを次元解析によって得られた無次元積で整理した結果、平板の寸法(幅・長さ)および振動状態(振動数・先端の振幅)から、ファンの送属量を予測する実験式を導出することができた。 次に、実際に圧電セラミクスをアクチュエータとする圧電ファンを使用して、振動平板の寸法をパラメータとした送風量測定実験を行った。ファンに印加する電圧を一定とする制約条件を設け、送風量を測定した結果、電磁式加振機を使って導出した送風量予測式の妥当性が確認された。また、送風量が最大となる平板の最適寸法(幅・長さ)を導くことができ、ファンの実用化へ一歩近づいたと言える。この実験を通して、実際のファン設計の際には、平板の寸法と振動の各パラメータ間に生じる相互依存関係を整理することの重要性が指摘された。更に、平板の振動モードが片持ち梁の一次モードと異なる場合には、実験式と送風量が一致しなくなるという間題点も明らかとなった。これは、平板の振動状態によって、周囲の流れ場の様相が大きく異なったものとなってしまうためと予想される。この未知なる流れ場の解明や、長方形以外の形状をした振動平板の有効性確認のため、今後は購入したYAGレーザを光源として、平板周囲の流れの可視化を行っていく予定である。
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