塗れ性分布と界面張力差駆動流を用いた新流体ハンドリングの開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14750129
• 研究機関: 独立行政法人航空宇宙技術研究所
• 研究代表者: 桜井 誠人 独立行政法人 航空宇宙技術研究所, 宇宙システム研究センター, 主任研究員 (80344258)
• キーワード: 微小重力 / マイクロマシン / 濡れ性 / 流体 / 界面張力 / マランゴニ対流 / 不溶二流体 / 相転移

研究概要

微小重力場においては濡れ性が支配的になるため、流体が容器の表面に沿って広がってしまう。そのため、濡れ性を変化させることによって流体を保持する方法を開発すれば微小重力場の流体ハンドリングには最適であると着想した。
温度によって濡れ性が変化する表面は温度応答性高分子IPAAm Poly(N-isopropyl acrylamide)を用いてキャピラリー内に形成された。この表面は高温時において疎水性を示し、低温時において親水性を示す。相転移温度は25℃から30℃の間であった。この相転移温度はモノマーよりも低温であった。キャピラリー実験結果はガラス平面で得られた結果と比較された。平面で得られたデータはキャピラリーで得られたデータよりも敏感であった。これはキャピラリー内に重合されたポリマーはガラス平板に重合されたものほど均一でないためと考えられる。濡れ性制御技術を応用し基板上にペルチェ素子と金属文字ブロックで温度分布を形成し、濡れ性分布により液体文字を形成することに成功した。この技術は濡れ性分布のみで基盤表面の微小水路を形成および閉鎖する技術の確立に道を開くものである。
フロリナートとシリコンオイルは不溶である。シャーレの中に満たしたフロリナートの上にシリコンオイルの液滴を浮かべると気・液・液界面の所を駆動力とした対流が発生することを発見した。そこでその駆動機構を明らかにする。現在までの研究でフロリナートの蒸発が重要な要素のようであることがわかっている。そこで、シリコンオイル・フロリナートを密閉系に入れ、トレーサー法により界面速度を計測を試みた。しかしながら、静電気の効果と考えられる液滴の振動が発生してしまい流速を計測することができなかった。次にシリコンオイル・フロリナート系のマランゴニ対流から機械的な動きを取り出すため水車を回転させることを試みた。OHPシートを用いた羽根車を作成し、一方の面のみに撥水性のテフロンフィルムを貼り付けた。これをフロリナートに満たされたシャーレの上に浮かべテフロンの張り付いていない面にのみシリコンオイルを付着すると羽根車が回転することを確認した。

研究成果

• [文献書誌] M.Sakurai, J.Leypoldt, H.Kuhlmann, H.Rath: "Pattern formation and transient thermocapillary flow in a rectangular side-heated open cavity"Microgravity Science and Technology. XIII/3. 30-35 (2002)
• [文献書誌] M.Sakurai, S.Yoshihara, M.Ohnishi, T.Aoyagi, T.Okano: "Preliminary Study of a New Fluid Handling in Microgravity Condition"Proc. ISTS 2002-h-9. 1669-1672 (2002)
• [文献書誌] 桜井誠人, 吉原正一, 大西充: "航空機実験によるg-ジッター影響計測実験装置の機能確認"日本マイクログラビティ-応用学会誌. Vol.20,No.1. 60-65 (2003)
• [文献書誌] M.Sakurai, S.Yoshihara, M.Ohnishi, K.Watanabe, T.Sekiya: "Functional Test of an Automatic Locking and Unlocking System for Passive Damper by Using Parabolic Flight",(2002)"Proc.53^<rd> International Astronautical Congress. IAC-02-J.P.05. (2002)
• [文献書誌] 桜井誠人, 吉原正一, 大西充: "濡れ性分布による流体ハンドリングのための基礎実験"Proc.第46回宇宙科学技術連合講演会講演集. 1366-1371 (2002)