研究概要 |
水電解による水素製造効率は、電極間の発生気泡の影響を受けるため、電極間隔には最適条件が存在する。昨年度までに、この水電解セルの第1次近似的な物理モデルを構築し、その検証を目的として局所電流密度、電極間発生気泡の上昇速度、電極間中心部の気泡直径分布を測定し、モデルの妥当性を確かめた。本年度は、モデルのさらなる検証と改良のためのデータ収集を目的として、電極間気液二相流の観察実験を行い、以下の知見を得た。 1.【電極表面からの離脱気泡径の測定】電極間気泡の上昇速度に、気泡直径が大きな影響を与える。昨年度までは、電極から離脱した後、合体プロセスを経た後の気泡直径分布のみを測定していた。しかし、今後のモデル改良のためには、電極からの気泡離脱条件を定式化する必要がある。そこで、高詳細マイクロスコープを用いて、種々のパラメータ(電解液温度と濃度、電極間隔、電流密度など)を変化させてアルカリ水電解実験を行い、低電流密度の場合の気泡離脱の様相を観察し、離脱気泡直径分布を計測した。その結果、以下のことが分かった。 (1)電流密度と電解液濃度は離脱気泡径に影響を及ぼし,電流密度と電解液濃度の増大は離脱気泡径の増大を招く。 (2)電極間隔は離脱気泡径にほとんど影響を及ぼさない。 (3)電流密度が増大すると、平均離脱気泡径は増大するものの、気泡径分布(標準偏差)はほとんど変化しない。つまり、気泡の合体により平均気泡径が増大するのではなく、気泡離脱条件に電流密度が関与し、直接離脱気泡径が変化していることを意味する。 2.【隔膜が存在する場合の離脱気泡径の測定】電極間に隔膜を挿入した実際の電解槽に近い条件で離脱気泡径を測定した。その結果、隔膜の存在は離脱気泡径にほとんど影響を及ぼさないことが分かった。 3.【水電解効率モデルの改良】気泡離脱条件に電流密度が関与することを明らかにした。
|