研究概要 |
1.主流乱れ生成装置の作成 当研究室所有の風洞では,主流乱れが約0.1%であり,国内でも有数の主流乱れの低い,良質な乱流境界層を得ることができる。この風洞の測定部上流に,主流乱れ生成のための格子を取り付けた。熱線流速計による測定の結果,主流乱れ強さは約1%,エネルギ保有渦の周波数は格子から放出されるカルマン渦の周波数となった。この周波数は設置した格子形状から見積ることができるので,主流乱れのスケールを容易に設定可能であることが明らかとなった。 2.主流乱れを伴う乱流境界層の風洞実験 生成した主流乱れが,零圧力こう配および逆圧力こう配を伴う乱流境界層にどのような影響を与えるかについて熱線流速計を用いて詳細に調べた。まず,平均速度分布について,対数速度分布を仮定せずに摩擦速度を求めた。その結果,零圧力こう配流れでは主流乱れを付加した場合でも対数速度分布が成立することが明らかとなった。また外層においては,他の研究者によって指摘されているように後流成分の低下が見られた。一方,逆圧力こう配流れでは,対数速度分布から下方にずれるという特徴については,主流乱れの影響を受けていなかった。また,外層では,零圧力こう配流れと同様に後流成分の低下が見られた。次に,より高次のモーメントについて検討した。主流乱れを付加した境界層の対数領域では,流れ方向速度変動のrms値が増加し,スキュウネスはガウス分布を示す0に近づいた。しかしながら,本研究で調査した範囲においては,内層での影響について,圧力こう配による差異はほとんど見られなかった。今後は,主流乱れのスケールおよび強さを系統的に変化させてさらに詳細に調べる予定である。
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