研究概要 |
本年度は,反応性熱流動による表面反応処理過程のナノスケール現象の解明のために,実験的アプローチとしてサブミクロン以下の局所発光計測実験と微小反応領域の作成実験を行った.次に,表面近傍の熱流動解析および表面反応解析のために,表面近傍の構造が熱流動に及ぼす影響を解析する分子動力学プログラムを新たに作成した.実験的アプローチは,サブミクロン以下の反応領域による自発光計測法の開発を目的とし,更なるスケールダウンを目指し,解析的アプローチでは表面近傍の分子スケールから数百ナノメートルの流動の直接解析を目的として,スケールアップを目指している. 1.反応性熱流動からの局所発光計測実験および微小反応領域の作成実験 500マイクロメートルから20マイクロメートルの内径をもつステンレス管,ニードルバルブと光学立体顕微鏡を用いて,サブミクロン以下の反応領域の作成を試みた.管径が200マイクロメートル以上では,常温下でメタンを燃料とする拡散火炎および予混合火炎が作成可能であった.燃料に水素を用いると管径が100マイクロメートルまで常温で連続的反応を持続することができた.また,反射型光学系を用いてそれらの微小反応領域からの励起ラジカルの発光を計測することが可能であった.しかし,本年度では,空間分解能および反応領域ともにサブミクロン以下の領域の計測までは至らなかった. 2.表面近傍熱流動反応解析プログラムの作成 表面に付着する分子1個から数十ナノメートルの構造物がある場合の表面近傍熱流動解析分子動力学プログラムを作成した.現在は,作成したプログラムを用いて,総分子数が数万個程度の系で数ナノ秒間における表面近傍での熱流動計算を試行している.また,金属表面での酸素分子の解離吸着解析プログラムを用いて,解離吸着確率と反応性熱流動の温度条件の関係を解析した.
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