研究概要 |
相変化現象は,加工などの製造過程や原子力発電など様々な分野で利用されているが,この現象を効果的に制御するには,相変化により生じる流動特性を解明する必要がある.数値解析による解明の試みは,相変化に伴う体積変化の影響がかなり大きいにも関わらず,二相間の密度を等しいと仮定したものや,液体の流動のみ解析したものがほとんどである.本研究では,相変化に伴う体積変化を考慮した熱流動の数値解析手法の開発を試みた.得られた主な結果は以下のとおりである. 1.界面移動と表面張力の同時計算法の開発 界面を界面位置,界面の法線方向,曲率を用いて多項式で近似し,界面速度を用いてラグランジュ法で移動させる界面移動法を開発した.界面移動後に曲率は既知量であるので表面張力は四則演算のみで求められる.開発した界面移動法で,球体や楕円球体の移動,球体の分離を計算した結果,かなりの精度で界面移動できることが分かった.過熱液中の気泡成長問題では,界面がほぼ球状で成長する結果を得た.しかし,界面に高周波成分の凹凸が生じていた.これは,界面を多項式で近似したために生じた曲率の誤差が,表面張力による力として流動場に影響を及ぼしたためであった.ゆえに,表面張力の影響が小さい現象において,本界面移動法が有効であることが分かった. 2.溶接アークの熱流束分布測定 次年度に行う予定であるアーク溶接における溶融池内の熱流動計算の境界条件として用いるために,溶接アークの熱流束分布の測定を試みた.2つの水冷銅板を並べ,その上部にアークを移動させ,水冷銅板より流出する水の温度差から熱流束分布を求めた.その結果,熱流束分布はガウス分布に近かい事が分かった.しかし,一定のアーク状態を維持した時の1枚の冷却銅板による熱量計測結果より,測定された熱量は冷却銅板の表面温度により10%程度変わることが分かった.
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