氷核生成を活性化させる物質(過冷却解除剤)を用いた現象の理解のためには、氷核活性の微視的メカニズムの解明が必要である。本研究では過冷却解除剤として氷核活性細菌に着目し、その細胞膜状にある氷核生成を促進する機能を持つタンパク質(ICE PROTEIN)の構造と核活性のメカニズムの関係を解明することを目的とし、分子力動学シミュレーションにより微視的なメカニズムを明らかにする。 本研究で対象となるタンパク質は最低単位として約5000原子からなり、また現象を観察するために必要となる水分子数は10000以上(30000原子以上)となることから、分子動力学シミュレーション専用計算機を用いた。分子動力学専用計算機とは、分子動力学計算においてもっとも時間がかかる力の計算を専用に行うボード(MDGRAPE-2)をホストコンピュータのPCIバスに挿した物である。氷タンパク質は細胞膜状に存在することから、まず脂質二分子膜を用意し、その上に氷タンパク質、水を置き、T=300Kにて平衡化のシミュレーションを行った。氷生成を促進させる作用をもつ氷タンパク質の構造自身について明確になっていないことから、本年は氷タンパク質自身の二次構造解析を中心に行った。現在もっとも妥当であると考えられるKajavaとLindowのICE PROTEINモデルではβターンを基調とする48残基単位の繰り返し構造をとること提案されているので、初期構造としてKajavaとLindowのモデルを用いた。二次構造を解析した結果、安定なβターン構造以外にもTsudaらの実験結果から予想される構造であるヘアピンループの二次構造を確認した。
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