本研究では、溶液濃度の直接計測が可能な磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)法をマイクロリアクター用モニターとして用い、微細なマイクロリアクターシステムに適合した直径1mmの検出コイルを持つ「超小型NMRモニター」を開発する。この超小型NMRモニターを反応領域に設置し、原料・生成物の濃度や混合状態を計測する。それを用いて加熱・冷却の繰り返しにより壁面に付着したタンパク質吸着量と緩和時定数の関係を定量化し、リアルタイムで得られる溶液濃度及び吸着量を基にして最適反応状態への熱的制御を行うことを目的とする。 開発目標とする「超小型NMRセンサー」は、1mm程度のマイクロリアクター壁面に設置され、反応場内のモニタリングが可能となるNMR受信コイル、静磁場を形成する磁石およびNMR信号送受信器・波形信号解析から構成される。平成14年度では、ハードウエアー側の開発として、微細流路に適合したNMR受信コイルと磁石およびNMR計測システムの製作およびそのSN比改善を中心に行い、極微小量の試料であってもNMR信号を取得できるシステムを構築した。さらに、慶應義塾大学理工学部物理情報工学科松本佳宣講師らの研究グループが持つガラス微細加工技術により模擬的なマイクロリアクターの製作を行った。そして、微細流路内からNMR信号を取得するための最小構成システムを開発し、「超小型NMRセンサー」の各要素での課題抽出と解決を集中的に行った。これにより次年度以降に計画を予定しているマイクロリアクター内での混合・反応状態および触媒性能の劣化状態を計測するための最も基礎となるNMR計測システムが構築された。
|