研究概要 |
本研究では、溶液濃度の直接計測が可能な磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)法をマイクロリアクター用モニターとして用い、微細なマイクロリアクターシステムに適合した直径0.5mmの検出コイルを持つ「超小型NMRモニター」を開発した。特に、コイル形状を「表面型」とすることで、マイクロリアクターへの設置が容易となり、反応場モニタリングへの適用性が向上した。この超小型NMRモニターを擬似マイクロリアクターに設置し、原料濃度としてのNMR信号を取得した。 核磁気共鳴現象では、分子挙動を含む情報としてNMR信号から対応する周波数により分子の結合状態が、スペクトル強度から分子濃度を、さらには励起状態からの核スピン緩和過程を示す緩和時定数T1,T2を収集することができる。それら核磁気共鳴現象に特異的に現れる核スピンの緩和時定数を計測し、その緩和時定数が触媒表面への吸着分子状態に強く依存している。このことを利用して、タンパク質の吸着などによる触媒性能の劣化をモニタリングすることができると考え、緩和時定数の計測手法および実際の計測パルスシーケンスの製作と計測実験を行った。これより、純水でのT1、T2緩和時定数を計測し、文献値とほぼ妥当な値を得ることができ、計測手法が確立したと言える。 また、マイクロリアクター温度を調整するためにガラス感光性基板を用いて微細加工を行い、マイクロリアクターに適合したマイクロチャンネルを試作した。製作したマイクロチャンネルの熱的応答を時定数として計測すると共に、マイクロヒータを用いて伝熱量の計測を行った。このマイクロチャンネルを用いることでマイクロリアクターの温調を行うことができることが分かった。
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