研究概要 |
今年度は大きくわけて2つの実験を行った.まず,(1)薄液膜の自由表面に対して傾斜した温度勾配を付加した際に生起する,温度差マランゴニ対流場に関して実験的研究を行った.特に今年度は,Smith & Davis(1983)がHydrothermal wave不安定を提唱した際に考慮した2つ基本対流場,すなわちreturn flowおよびlinear flowを実験的に実現し,それぞれにおける対流パターンの発生条件を求めた.また,(2)自由表面を有さない系におけるデンドライト形成に関し,様々な試験流体を用いて基礎実験を行った. 実験(1)は矩形流路を有する装置を製作して行った.上流側底面を加熱,下流側底面を冷却することにより,傾斜温度勾配を実現する.また,return flow実験を行う場合には,上流および下流側に壁を設け,双壁間にて対流場を実現した.linear flowを実現する場合には,上流側に整流板を,下流側に背の低い堰を設けることで実現した.linear flowに関する実験を実現するのは世界で初めての例となる.このような装置を用い,各基本対流場において様々な温度条件を付加して,生起する対流パターンの発生条件を用いた. また,実験(2)では,1方向に温度勾配を付加した液膜内での凝固を観察する装置系を構築し,ヘキサデカン,ジメチルスルホキシドなど数種類の試薬を用い,その凝固過程,またその形状について解析を行った. 以上の結果に関し,第55回アメリカ物理学会流体部門年次大会,第18回日本マイクログラビティ応用学会講演会等において成果を発表した.
|