自転車などの二輪車は、自動車等に比べて自由度が大きく、3次元の複雑な運動を行うため理論的解明が遅れている。また、二輪車の運動解析は、現在、自動二輪車(オートバイ)を中心に行われているため、自転車に関する解析はほとんど行われておらず経験による開発に頼っている。 自転車とオートバイの相違点は、求められる性能と、その質量、剛性などの力学的特徴にある。オートバイは特に高速領域での安定性が求められるが、自転車は低速域での安定性と操縦性が求められる。力学的には、自転車の質量は人間の数分の一程度と非常に軽く、人間の姿勢、ダイナミクスはオートバイの場合に比べ運動特性に大きな影響を与える。また、車体剛性はオートバイに比べ低く、乗車時にはフレームが数cm単位で変形することもある。また、現在、自転車は、他の交通システムとの連携の重要性から、軽量化、折り畳みによるコンパクト化が進んでいる。これらの折り畳み自転車は、軽量化と折畳みジョイントを有することで、十分なフレームの剛性を確保することが難しく、自転車をフレキシブル・マルチボディ・システムとして捉えることが求められている。 本年度は、自転車の運動方程式をマルチボディシステムととらえ定式化を行った。運動方程式を見通し良く導出するため、仮想仕事の原理とD'Alembertの方程式を適用し、これにより前輪軸、後輪軸、ハンドル軸による軸拘束を暗に含む方程式を効率よく導出できた。この際、方程式をベクトル表記することで、煩わしい座標変換に依存しない方程式の取り扱いが可能となった。
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