代表研究者が提案する高トルク進行波型超音波モータを構成する際の基本的な振動系であるボルト締めランジュバン型複合振動子を駆動源として円環にたわみ進行波を励振する振動系のうち、2つの直行するたわみ振動モードを一本の振動子の中に励振できるたわみ複合振動子を利用する構成について、その実現性およびこれまでの試作で用いられている複数のランジュバン型縦振動子を用いる方法との比較を行った。まず、円環の寸法および振動子と円環との接合方法を変化させたいくつかの構成において、有限要素法解析を用い振動系の共振周波数、振動モードおよび電気-機械変換係数の計算および比較を行い、超音波モータを構成するために適当と考えられる構成を理論的に検討した。次にその理論的検討結果に基づいて、外径130mmの円環の外周部に、直径30mmの振動子を溶接する構成の振動系を試作し、共振周波数の測定及び円環上のたわみ進行波の励振を実験的に検証するとともに、解析モデルの有効性を確認した。さらに、機構の最適化、電気駆動・制御法は最適化されたものではないが、ロータおよび加圧装置など、超音波モータを構成するために必要な機構を試作し、振動子の2つの振動系への入力電流位相差を±90度に変化させることで、原理どおりロータの双方向回転動作が行えることを確認した。その際得られたモータの出力特性は、印加電圧200Vrms、静的予圧172Nにおいて、最大トルク1.2Nm、最大効率3.8%であった。
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