代表研究者は前年度までに、提案する高トルク進行波型超音波モータを構成する際の基本的な振動系であるボルト締めランジュバン型複合振動子を駆動源として円環にたわみ進行波を励振する振動系のうち、2つの直交するたわみ振動モードを一本の振動子の中に励振できるたわみ複合振動子を利用する構成について、その実現性を検討し、外径130mmの円環の外周部を、直径30mmの振動子で駆動するモータ構成で、印加電圧200Vrms、静的予圧172Nにおいて、最大トルク1.2Nm、最大効率3.8%を実験的に確認した。 本年度は、この試作モータ、および以前に試作されたランジュバン型縦振動子を用いた構成も含めた特性解析モデルを構築し、計算機上で振動系の特性パラメータを様々に変化させることで、モータの限界性能を明らかにし、実験結果の理論的評価を行った。各振動子の圧電素子で行われる電気・機械エネルギー変換には機械系の振る舞いを等価な電気回路素子で置き換える電気的等価回路モデルを、ロータ・ステータの接触部に摩擦材として用いられる粘弾性材料には、ばねとダンパが並列に作用するフォークトモデルをそれぞれ用いたモデルを仮定した。その結果、摩擦材の粘性が、モータの回転速度、出力トルクに与える影響は小さく、出力効率のみに大きく作用することが分かった。また、実験的に得られた最大トルクが、与えられた電圧、静的予圧下ではモータがその限界性能を発揮したものであることが明らかになった。
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