本研究研の目的は、2光子サブミクロン造形法を用いて、種々の光駆動マイクロマシンを開発し、新しいマイクロ流体制御デバイスやバイオ研究用ツールを創製することである。本年度は、2自由度駆動が可能なナノニードルの駆動特性向上に関する以下の研究開発を行った。 (1)高出力YAGレーザーを用いた高効率光駆動システムの構築 前年度は、光駆動システムとして、2光子マイクロ光造形装置を流用していたため、レーザーパワーが100mW程度しか得られていなかった。そこで本年度は、最大出力4Wの高出力YAGレーザーを光源に用いた新たな光駆動システムを構築した。これにより、より高速かつ高出力の光駆動が行えるようになった。 (2)2自由度駆動型ナノニードルの最適設計 2自由度の駆動が可能なナノニードル(プローブ径:250nm)の最適設計を行った。具体的には、シングルビームで高効率な光トラップが行えるようにナノニードルの駆動部に取り付けられている「トラップポイント」の形状を最適化した。実験では、円柱形上のトラップポイントの高さと直径をさまざまに変化させ、光駆動実験を行った。その結果、直径1.1ミクロン、高さ4.2ミクロンの円柱形状が最適であることがわかった。最適形状のトラップポイントを有するナノニードルを作製し、駆動性能評価実験を行った。駆動実験では、先に開発した新駆動システムを用いて、最大回転数120rpm、最大並進駆動12Hzを実現した。 (3)ナノニードルによる微小物体の操作実験 最適設計したナノニードルを用いて、液体中で微小物体を操作する実証実験を行った。実験では、液体中に浮遊するマイクロ物体をニードル先端で刺す、押すなどの動作に成功した。この結果から、ナノニードルが細胞やタンパク質などの生体試料の微細マニピュレーションに有効であることが確かめられた。
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