研究概要 |
本年度は,人工触覚認知の基本スキームを構築するための基盤技術として,人間の曖昧な触覚認知を定量化する方法の発案,および触れあい状況識別システムのテストべッド開発を行った.これは,触れられ側の人間(受け手)が撫でられたり,叩かれたり,引掻かれたりする際に身体に及ぼされる触覚刺激の特徴をロボットに学習させることで,触覚刺激パターンから人間とほぼ同様に触れあい状況の推測・識別を行うというものである. 具体的にはまず,触れあい状況に対する人間とロボットの触覚認知結果を言葉で表出させるために,触れあい状況の単位となる表現語を日英の分類語彙辞典から選出した.これらの状況の識別に必要な圧力分布や接触面積など多様な触覚情報の検出を行うために,人体計測データを参考に人問の肩を模擬した外殻の表面に等間隔で密に圧力センサを配備すると共に,6軸力覚センサを介して外殻と支持台を接続した触覚インタフェースを設計・試作した. 次に,修正対向伝搬ネットワークと呼ばれる自己組織化手法を用いて触覚情報処理機構の構築を行い,多次元触覚情報と触覚認知(表現語)の定量的な対応づけを行った.ここでは,触覚インタフェースで得られる触覚情報からピーク合力値や事象回数など計14個の特徴量を選定した上で,それらを自己組織化処理にかけ,多次元空間内に触覚情報特徴量の部分空間を構成した.同時に,各表現語の空間分布傾向を学習させ,触覚情報と表現語の定量的な対応関係情報を蓄積した自己組織化マップ(SOM)の生成を行った.さらに,生成されたSOMを用いて,新たに入力された触覚刺激パターンに最も特徴が近い最近似ニューロンを特定しかつ各表現語への帰属度を確率的に自動判別できるシステムを構築した. 最後に,これらを用いて触覚認知実験を行った結果,同一の触覚刺激に対して受け手とほぼ同等の状況識別ができることが示され.本手法の有効性が確認された.
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