研究概要 |
本年度は,触れられ側の人間(受け手)が撫でられたり,叩かれたり,引掻かれたりする際に身体に及ぼされる触覚刺激の特徴をロボットに学習させることで,触覚刺激から触れあい状況を受け手とほぼ同等の曖昧さで推測・識別可能なシステムの整備,ならびに人工触覚認知の基礎理論を確立した. 具体的にはまず,触覚刺激から抽出される特徴量と触れあい状態(表現語で記号化)の関係をNNで学習させた上で,触れあい状態相互の混同しやすさを混同行列で整理する方法を考案した.さらに,触覚情報の質や学習条件の設定に応じて変容する認知の混同度合いを定量化するために,混同行列を基に認知の混同しやすさを数値化する評価指標を案出した.この指標に基づき,状態識別を容易にする特徴量の組み合わせの選出ならびに触覚センサ空間分解能を設定する方法を導出した.また,これらの手法を用いて決定した空間分解能を有する圧力分布センサを最外殻に配し,かつ人体の肩・上腕・前腕の体格・外形状を模した触覚インタフェースの設計・開発を行った.次に,取得された触覚刺激の特徴を表現語ごとに自己組織的に汎化処理させることで,表現語ごとの特徴量を多次元空間内で分類するだけでなく,新たな触覚刺激入力に対し最近似ニューロンを特定し各表現語への帰属度を確率的に自動判別できる実時間識別システムを構築した.ここでは,競合層の階層化を図ることで,同一の触覚刺激に対し触れあい状況・痛み・圧迫感認知を並列的に出力できるように情報処理機構の設計を進めた. 最後に,受け手の認知を学習させたロボットに対し新たに触覚刺激を入力する総合実験を行った.その結果,上記三つの認知を並列的に,かつ各表現語への帰属度を確率的に出力でき,また,受け手の認知との一致率90%を達成できることが確認され,人間と全身で触れあうロボットの人工触覚認知を構築する上で本手法が有効であることが示された.
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