研究概要 |
多指ロボットハンドにより把握が困難な微小物体としてコイン状の物体に着目し,ヒトによる把握動作実験を行った.把握状況として自動販売機等のコイン返却口(以下,返却口)を仮定し,返却口の幅,手前側の壁の高さ,壁の傾き,エッジの形状をパラメータとした.幅は指4本分,2本分,1本分の3種類,手前側の壁の高さは高い(30[mm]),低い(6[mm])の2種類,壁の傾きは急斜面(90[deg]),緩斜面(60[deg])の2種類,エッジ形状は角とR(半径15[mm])の2種類を用意した. 実験の結果,ヒトは,示指あるいは中指指先で返却口手前の壁の角を支点としてコインを回転させて把握する戦略(Type-A),手前の壁の代わりに母指を利用して指先と床面の接点を支点として回転させて把握する戦略(Type-B),コインを床面に押し付けたまま壁に沿って滑らせて把握する戦略(Type-C)を使い分けていることが明らかになった.いかにして最終的に指先把握を実現するためにコイン両面を空中に浮かんだ状態にするかに着目すると,壁と床面の間のエッジあるいは母指と床面の間のエッジを支点としてコインを回転させて床面から引き剥がす動作(Type-AとB: Rolling motion),コインを壁に沿って滑らせて返却口手前の空間に突き出す動作(Type-C: Sliding motion)に分けられる.実験結果より,返却口の幅や壁の高さは把握戦略に影響を与えないこと,エッジ形状が丸みを帯びている場合はSliding motion,それ以外の場合はRolling motionを選択することが明らかになった.
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