研究概要 |
ヒトがコイン返却口からコインを取り出すときの手指の動き(把握戦略)を解析し,多機能な多指ロボットハンドあるいは自由度に制限のある義手への応用を目指す. 昨年度の予備実験では,返却口手前の壁の角を支点としてコインを回転させて把握する戦略(Type-A),手前の壁の代わりに母指を利用して回転させて把握する戦略(Type-B),壁に沿って滑らせて把握する戦略(Type-C)の3種類に大別した.本年度は実験パラメータ(返却口の幅,高さ,奥行き,壁の形状など)を再度見直し,1被験者あたり48通りに増やした.また,把握パターンの観察をより詳細に行った結果,パターンA〜Iの9パターンに増加した.被験者数が増えた結果,昨年度は見られなかった特殊な把握パターンも発見された.コインを回転させる際に,手前側の壁と床の間のエッジを利用するのではなく,側面の壁と床の間のエッジを利用するパターンである.この動作を実現するには,指姿勢は動かさずに手首を回転するだけで良く,自由度の少ない義手へ応用するのに適している.多くのヒトが選択するオーソドックスな把握戦略と並行して,新たに発見した把握戦略も解析を進める. 本年度は,ヒトによる把握戦略の解析と並行して,構築した把握戦略を多指ロボットハンドに適用可能かどうかを検証するための実験装置の設計・製作を行った.実験に使用する三本指三関節ロボットハンドは広島大学より移管した.この多指ロボットハンドを三次元空間上で移動可能とする三自由度位置決め装置を購入した.2つの装置を組み合せることで,多指ロボットハンドに,上下,前後の直線変位と仰屈の回転変位の自由度を実現した.本年度は動作確認までで,本格的に稼動するのは来年度である.
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