1研究目的・研究実施計画 本研究では、生活支援や介護支援など人間との接触を有する作業をロボットに行わせるため、マスタスレーブ方式による人間共存型ロボットの実用化を進めている。課題としては、作業対象者に対する安全性や親和性の確保が不可欠であり、作業対象者がロボットの動作から受ける恐怖や不快といった感情を軽減しなければならない。そのため、人間共存型ロボットの実用化を進めるためには作業対象者の感情を確実に把握し、操作者に伝える機能が必要不可欠である。そこで、本年度は作業対象者が感じる恐怖、驚き、不快といった感情を把握するために、人間の生体反応および非言語的な動作から感情を把握することを試みた。非言語的な動作として眼球運動(視線方向)に着目し、人間の感情と眼球運動との関連を調べた。 2研究成果 ロボットを用いて要介護者の介護支援を想定した作業を行った結果、ある限られた状況においては視線方向から意図や感情が把握できることを確認した。また、人間の生体反応としていろいろな筋肉の筋電位を測定したが、感情を把握することは困難であった。しかし、眼球運動を用いることで言葉やジェスチャを用いることなく意図や感情を表現することができるため、肢体不自由者や重度障害者用のインタフェースとして有効である。提案している方法は、人間が注視している視線方向に基づいて意図や感情を把握するため、人間は大局的な眼球運動でそれらが表現でき、眼球疲労もほとんどない。本年度は、視線方向から意図や感情を把握することに主眼を置いていたが、次年度はロボット操作用のマスタ装置としての応用を検討する予定である。従来の方法ではロボットを操作することができなかった障害者でも、眼球運動を用いることでロボットを操作することができると考える。その結果、ロボット操作用のマスタ装置は人間装着型となり、小型・軽量化が課題となるが新たなマスタ装置として期待される。
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