本研究は地球温暖化防止を背景としたSF_6絶縁ガス使用量低減のための基礎研究で、SF_6ガスをN_2他で希釈した際の絶縁特性相乗効果発生機構の解明を目的とし、電子エネルギー損失過程と電子捕獲機構の微視的定量的解析が主眼である。平成14年度は研究計画に沿って解析プログラムを構築し高速PCで基礎データを算出した。電子エネルギー分布計算プログラムに各ガスの電子衝突断面積を組込み素過程毎に衝突周波数等を算出した他、モンテカルロ法プログラムも別途構築し連続した衝突間の電子挙動を追跡した。解析結果は次のようにまとめられる。 1.エネルギー損失過程:SF_6/N_2混合ガス中の電子エネルギー損失量内訳はN_2との衝突によるものの比率がN_2の混合比を上回り、N_2がその混合比以上に電子エネルギー損失過程を担っていた。「N_2が電子のエネルギーを奪い、SF_6が低エネルギーとなった電子を捕獲する」との従来の説明が量的に確かめられた。 2.衝突間の電子挙動:SF_6への電子付着時とその直前の衝突時の電子エネルギー分布から電子付着に関与する衝突過程の特定を試みた。SF_6、N_2の振動励起が付着直前の衝突の多くを占め、特にN_2の振動励起は電子からエネルギーを奪う働きの他、一旦低エネルギーとなった電子をその状態に保つ働きがあることから、これら2つの働きにより電子付着の機会が増したと考えられる。 3.電子衝突断面積間の関係:相乗効果発生をモデル化するためエネルギー損失を担うガスと電子付着を担うガスに分けて複数のモデルガスの組み合わせを比較した。非弾性衝突の生じるエネルギー域を連続的にして低エネルギー部への電子輸送促進を企図したが相乗効果は大きくなく、代わって低エネルギー部の付着を大きくすると上記の連続性に関係なく相乗効果が大きく現われた。2で述べた効果がうまく働く条件を整えることで相乗効果が発生することが強く示唆された。
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