研究概要 |
本年度は,主として高温超電導コイル冷却用固体窒素冷媒の熱伝達特性改善法ならびにその蓄冷効果に関する研究を行った。以下のような研究成果が得られた。 1.昨年度までに,伝導冷却で冷却速度を非常に遅くして窒素固化を行うことにより,固体窒素と冷却対象との熱接触が格段に向上することを明らかにした。本年度は,実際にBi-2223/Ag多芯テープを用いて小形高温超電導ソレノイドコイルを製作し,同コイルにおいても同様の効果が得られることを確認した。これは,過電流通電時の温度ならびに電圧測定によって確認されたものである。また,高温超電導コイルを上記方法で固体窒素含浸後,2気圧程度に加圧することによって熱伝達特性がさらに向上することを示した。この原因としては,加圧によって固体窒素の昇華が抑えられたものと推測され,現在検討を進めている。 2.液体ヘリウム熱交換方式による高温超電導コイル実験用窒素固化装置を設計・製作し,その冷却特性を調べた。これは,ある一定時間外部からの冷媒供給を要しないスタンドアロン方式高温超電導コイルシステムを志向して製作したものである。液体ヘリウム流路と固体窒素含浸コイル設置用試料室間の熱交換効率向上のため,両者の接触面積を向上する工夫を施した。実験の結果,熱交換器のシール部にリークがあることが判明し,当初予測した結果は得られなかったが,ある程度の蓄冷効果を実験的に確認することができた。現在,上記リークの問題を改善し,より詳細な実験を行うべく準備を進めているところである。また,固体窒素とネオンを混合した場合についても熱伝達特性ならびに蓄冷特性の実験を行う予定である。
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