本研究はプラズマディスプレイパネル(PDP)放電における劣化過程を解明するため、PDP放電セル内の粒子挙動や劣化現象について、実験及び理論の両方面から考察を行なうものである。 研究方針としては、1)PDP放電セルを用いた劣化試験を行い、放電劣化特性を調べる。2)MgO保護膜の表面物性変化を分析し、劣化による影響を調べる。3)放電中の劣化現象を確認するためMgO保護膜からスパッタされたMg粒子の挙動をレーザー分光法により実測する。4)計算機シミュレーションにより実験条件におけるプラズマ挙動と構造を解析すると共に、実験結果についての理論的な検討を行なう。 上記の研究項目について、これまでの進展状況及び結果は次のとおりである。 1)PDP放電セルに300kHzの高周波パルスを加え、放電特性を調べたところ、短期間で放電劣化が起こることが分かった。これはMgO保護膜の表面変化によるものである。 2)劣化試験後MgO保護膜の表面分析を行なった結果、MgO表面にわたるエロジョンと汚損の領域がそれぞれ局部的に存在することが確認できた。これはプラズマ挙動と構造による影響であると考えられる。 3)劣化により放出されるMg粒子を実測するため、レーザー分光計測システムを構成し、測定を行なった。しかし、Mg放出粒子に比ベガス密度が高いため、十分な信号を得ることができなかった。強いレイリー散乱光や迷光を取り除く必要がある。この対策について現在検討を行なっている。 4)上記のような実験結果を理論的に説明するため、劣化放電条件におけるプラズマ挙動と構造をシミュレーションしている。今までの結果によると、300kHzの劣化放電条件ではプラズマの局在化が起こり、それによってMgO表面にわたるエロジョンと汚損がそれぞれ局部的に進展する。エロジョン優先領域は電極先端部近傍であり、この領域ではMgOの2次電子放出効率も最大となる。その以外の領域では、表面汚損などの変化によって、2次電子放出効率の低下と共に放電電圧上昇など、放電劣化が進展することが分かった。 現在、学会発表と論文投稿をするため、今までの研究結果をまとめている。今後、上記3)の研究項目を中心としたさらに詳しい研究を行なう予定である。
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