研究概要 |
本年度は,1レグ共通形単相-単相ブリッジ形電力変換器において,昨年度に妥当性を確認した,入出力における総合効率が最も高くなる各レグ制御法を適用した電子回路による模擬実機を試作し,実機に適用した場合の問題点と改良点を明確にすると共に,単相100V,2kVAの試作機を試作した。 本研究により提案する高効率制御手法を適用した電子回路による模擬実機は,実際に試作する実機に対して電圧は1/20倍で電流は4/25倍の大きさとし,リアクトルやフィルタコンデンサなども忠実にゲイン換算するとともに,実機と同様のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)制御により電力変換器の交流側出力電圧はPWM電圧波形を出力する。この模擬実機により以下の結果が得られた。 1 損失の重み付けゲイン関数は「出力電圧に対する余弦関数の平方根」として数式化することで,損失計算の精度が上がるとともに,最高効率となる各レグ電圧を精度よく算出可能となった。 2 スイッチングに伴う電流波形の高調波が各レグ電圧の算出に影響し,各レグ電圧算出においてはスイッチング周波数を除去するフィルタを介してリアルタイムに損失算出を行う必要がある。 3 軽負荷時においては各レグ制御による効率の高低差がほとんどなく,最高効率になるとして算出された各レグ電圧出力のための不必要なスイッチングが損失となる場合がある。このため,このような状況の場合にはスイッチングが最小となるレグ電圧を最適とする必要がある。 4 入力力率98%以上,正弦波入力電流,出力電圧歪み率3%以下を達成できた。 5 模擬実機において,直送領域を増加する高効率化が自動的に適用できた。 以上の結果を踏まえ,現在,本制御手法をリアルタイムに適用したDSP制御による100Vrms,2kVAの実機を試作し,完成間近であり,本年度の基本的目的は達成できた。
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