研究概要 |
送配電線はネットワークで結ばれており、その故障点発生点の特定方法は計器用変成器を用いたもので、原理的に故障点がその計器の上流側か下流側かで故障しているということだけを特定するものであった。その計器の配置間隔はおよそ20kmにも及ぶものもあり、断線などの事故が起きた場合、その間隔をすべて調べなくてはならず、巡視者がその区間の電線を目視することで断線の場所の特定を行うという時間と労力のかかる作業であった。 このような背景のもと本研究では、送配電線をネットワークとみなし、そのネットワークの送信端子に疑似不規則信号のひとつであるM系列を入力し受信端子で受信する方法を提案する。受信端子ではM系列と受信信号との相互相関関数をもとめる。その相互相関関数は、送配電線上の送受信端子間の伝達関数を示しており、もし、送配電線に断線などの故障が存在すれば正常時の相互相関関数と逆畳み込みをおこなえば,故障の種類および場所が特定できると推定できる。また、送信端子を複数の箇所に設置すると、受信端子からは複数の送信端子への伝達関数が見えるはずであり故障の場所およびその種類がより精密に推定できるはずである。 平成14年度は,実験的に0.5kmのシールド線5巻をつかってループ回路をつくり,複数の送信端および受信端間の断線を取り扱った.正常状態との相関関数を比較することにより断線箇所がループ回路のどの辺(0.5km)であるか推定できた。 平成15年度は、故障箇所の場所推定精度の上限を理論的にもとめ、実験を行ない,その理論精度に近づけたい。また、故障の種類を地絡,他相接触などの他の種類に広げることを目標とする。
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