研究概要 |
今年度の研究において,ブートストラップ回路を用いたリング型SC(スイッチトキャパシタ)DC-DCコンバータと、セルネットワーク構造をもつ昇降圧型SCDC-DCコンバータを提案した。提案のブートストラップ回路は,ダイオードを用いて構成した最大値回路により,電源回路中の最大電圧をキャパシタにチャージし,そのキャパシタをパワースイッチのゲート端子と電源回路中の最大電圧を与える節点との間に接続する。このため,パワースイッチのソースーゲート端子間に,入力電圧をチャージしたキャパシタを接続する従来のブートストラップ回路よりも,電源回路の昇圧動作時に,高い電圧を与えることができる。一方,セル構造をもつ提案の電源回路は,従来のリング型SC電源と比較した場合,少ないパワースイッチで回路を構成することができる.このため,製造コストや回路構造の簡素さにおいて,従来の方式より優れている.また,パワースイッチの数が少ないため,回路における熱の発生も少ないと考えられる.さらに,パワースイッチを駆動するためのクロックパルスの位相が従来回路のものよりも少ないので,クロック発生回路などの周辺回路を簡素にできるという利点をもつ. これらの提案回路については,SPICEを用いた回路シミュレーションにより,その特性を明らかにした。シミュレーションの結果,提案のセルネットワーク型電源回路はリング型SC電源回路より高速に動作でき,入力電圧の2倍の電圧と1/2の電圧を高効率で出力できることを示した。また,提案のブートストラップ回路を用いた電源回路は,従来のブートストラップ回路を用いた電源より,出力負荷が100Ωの場合に電圧変換効率を8%以上改善できることを明らかにした。さらに,個別部品を用いた実験により,提案回路の動作を明らかにした。
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