研究概要 |
今年度の研究において,入力電圧の昇降圧変換を行うリング型SC(スイッチトキャパシタ)DC-DCコンバータと、昇圧変換のみを行う改良型ディクソンDC-DCコンバータを提案した。提案のディクソンDC-DCコンバータは、出力電圧の都合上、仕様用途が狭まるが、昇降圧変換を行うタイプに比べて1/2以下の回路規模で実現できるため、携帯電話などの小型・薄型のモバイル機器の電源として有効である。一方、昇降圧変換を行うリング型DC-DCコンバータは、昇圧変換のみを行う電源回路に比べると回路規模は大きくなるものの様々な種類の出力電圧を供給することができるため、ディジタルカメラなどの複数種類の電圧を必要とする電気機器の電源として有効である。各提案回路については、ブートストラップを利用することにより変換効率の改善を行った。提案のブートストラップ回路は,ダイオードを用いて構成した最大値回路により,電源回路中の最大電圧をキャパシタにチャージし,そのキャパシタをパワースイッチのゲート端子と電源回路中の最大電圧を与える節点との間に接続する。このため,パワースイッチのソース-ゲート端子間に,入力電圧をチャージしたキャパシタを接続する従来のブートストラップ回路よりも,電源回路の昇圧動作時に,高い電圧を与えることができる。 これらの提案回路については,SPICEを用いた回路シミュレーションにより,その特性を明らかにした。シミュレーションの結果,提案のディクソンDC-DCコンバータは従来回路に比べて、出力負荷が100Ωの場合に電圧変換効率を6%以上改善できることを明らかにした。一方、提案のリング型においては、12個のパワースイッチと4個のキャパシタを用いて設計した場合に6種類の昇降圧変換した電圧を出力できることを明らかにした。さらに、ディクソンDC-DCコンバータについては、ICを試作するためのレイアウト設計を行った。
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