本年度は、ZnSナノ結晶を発光層に用いた交流駆動薄膜エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関する性能向上ならびにフルカラー化に関する研究、特にTb化合物を添加したZnSナノ結晶からの緑色発光の高輝度化とTm化合物の添加による青色発光素子の試作に重点を置き研究を行った。前年度の結果から、素子構造は、素子安定化・高輝度化に有利な二重絶縁構造とした。透明電極付きガラス基板上にTa_2O_5誘電体層/ZnSナノ結晶発光層/Ta_2O_5誘電体層/Al電極を順次形成した。ZnSナノ結晶は、低温製膜・大面積化に有利な多元スパッタ法を用い、結晶成長を遮断するSi_3N_4層との交互積層により、作製した。本方法では、結晶粒径は、成長時間にほぼ対応することが、これまでの実験により明らかとなっており、結晶粒径の異なるナノ結晶の作製がほぼ確立されている。まず、緑色発光に関して、TbF_3単独添加よりもTb_4O_7を共添加したTbOFを発光中心にすることが、高輝度化に有効であることが新たに判明した。この結果は、ナノ結晶内においてもバルクZnSと同様の電荷補償効果が発現した結果であると解釈され、ナノ結晶における基礎物性的にも極めて興味深いさらに絶縁層であるTa_2O_5層の改良を行い、緑色発光においてはナノ結晶デバイスとしては最高の54.8cd/m^2を達成した。加えて、TmF_3を添加したZnSナノ結晶を発光層とした二重絶縁型構造EL素子を試作した。現時点では、色純度、輝度とも十分ではないが、ナノ結晶EL素子において初めて青色発光を観測した。この結果、既に達成しているMn添加ナノ結晶ZnSによる赤色発光と合わせて、光の三原色が揃い、フルカラー化が可能であることを実証した。
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