ヘテロ半導体(Si_<1-x>Ge_x)の微細化・集積化を推進する為には、ドライプロセスで発生する損傷を低温(600℃以下)で除去する事が不可欠である。この為には、照射イオン粒子が誘起する点欠陥(空孔、格子間原子)の挙動を解明し、この結果を基に点欠陥の複合化(損傷形成過程)を制御し、残留損傷を低減する事が重要である。 本年度は、損傷形成の特性量をGe混晶比xの関数として解析し、損傷形成の特性量を制御し得る要因を探索した。次いで、ドライプロセスによりヘテロ材料に導入される損傷を積極的に利用し、微細加工を行う手法を提案した。 (1)点欠陥挙動の制御要因の探索 イオン線照射によりヘテロ半導体(Si_<1-x>Ge_x)中に形成される損傷の残留量を照射時の基板温度の関数として整理し、Si(X=0)及びGe(x=1)における損傷形成は、空孔の移動により律速される事を明らかにした。更に、Ge混晶比(0≦x≦1)で同様の解析を行い、ヘテロ半導体(Si_<1-x>Ge_x)中における損傷形成は、空孔の移動により律速される事、空孔の移動エネルギーは、ベガード則に従う事を明らかにした。この結果は、照射欠陥の形成過程を制御するためには、Ge混晶比によらず、空孔のダイナミクスの制御が必要である事を示唆している。 (2)残留損傷を利用した微細加工技術の探索 Si集束イオン線照射によりSi酸化膜中に空孔/過剰Siを導入し、希釈フッ酸によるエッチング過程を系統的に評価した。その結果、低照射量では、空孔の導入が支配的となりエッチングが促進される事、高照射量では過剰Siの導入が支配的となりエッチングが減退する事を明らかにした。この原理を用い、Si酸化膜を数nm精度で微細加工する事に成功した。
|