研究概要 |
本研究は、液相からの薄膜作製法である電析法を用いることで、一般的な薄膜作製法として用いられている気相法では得られない新しい物質製作を原子レベルで行おうとするものである。電析法は、最適な電析条件が決まれば電極電位の調整により比較的容易かつ多くの試料作製を短時間に行うことができ、さらにコンピュータを用い、パルス電位の波形,通過時間を精密にコントロールすれば、原子単位で制御された多層膜を作製することも可能であるので、我々はこの手法を応用することで強磁性ナノ構造膜を作製し、その電気抵抗のスピン依存散乱のメカニズムについて検討することを目的としている。 平成14年度は、まず、多層膜作製のため、コンピュータを用いたパルス波形制御電源装置の開発を行い、これによる非結合型多層膜の作製とその電気的,磁気的性質について検討を行った。 その結果、自作した電源装置を用いパルス波形の電位を制御することにより、強磁性であるNi, Fe及び非磁性であるCuが含まれた一つの電解溶液中から、組成及び保磁力等の磁気特性の異なる強磁性層及び非磁性層の3層を繰り返し積層させた非結合型多層膜を作製することが可能であった。また、その磁気抵抗効果は、現在のところ低磁界(3000e程度)において4%程度の値が観測されており、さらに電析条件を調整することでより大きな磁気抵抗効果が得られることが予想されるが、このような電析法による作製技術においても、比較的磁界感度の高い薄膜材料を得られることが明らかとなった。 現在、上記多層膜における磁界感度の向上を図るため、反強磁性膜を用いた積層膜作製の検討をしており、そのため、パルス波形制御電源装置の改良及び使用する反強磁性物質の選定を行っている。
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