半導体ナノ構造作製において、従来のドライエッチングに比べ低損傷なエッチング法を開発することは、非常に重要である。放射光を用いた光化学反応によるエッチングは、イオン衝撃が無いため低損傷であること、光の直進性により垂直エッチングが可能なことから期待されている。本研究課題では、重要かつ基本的な材料系であるSi基板上酸化膜のエッチングを取り上げ、その放射光励起脱離反応をSTMにより直接観察することを目的としている。 現在まで、LEED観察によりSi(111)基板上およびSi(001)基板上の酸化膜について、STM観察によりSi(111)基板上の酸化膜について、放射光照射効果を調べた。LEED観察の結果からSi(111)上とSi(001)上では酸化膜の消失時間が異なることが解り、ここからSi(111)酸化膜の方が脱離速度が速いと考えられる。STM観察の結果から、酸化膜消失後の表面は清浄7x7再構成表面となり、直線的なステップ形状を持ち、ステップ端はダイマー列に沿っていることが解った。これは放射光照射効果により熱平衡状態に近い表面が容易に得られることを示している。 次年度秋に照射光源としてアンジュレータ光を利用することが可能になり、これによって現在まで得ることが困難であった励起エネルギー依存性を調べることが可能になる。この実験にはSi内殻電子励起とエッチング現象との関わりを調べる重要な意義がある。本年度は、その準備としてビームライン(分子科学研究所極端紫外光実験施設BL7U)を設計・建設準備した。
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