半導体ナノ構造作製において、従来のドライエッチングに比べ低損傷なエッチング法を開発することは、非常に重要である。放射光を用いた光化学反応によるエッチングは、イオン衝撃が無いため低損傷であること、光の直進性により垂直エッチングが可能なことから期待されている。本研究課題では、重要かつ基本的な材料系であるSi基板上酸化膜のエッチングを取り上げ、その放射光励起脱離反応をSTMにより直接観察することを目的としている。 平成14年度より設計・建設してきたアンジュレータビームライン(分子科学研究所極端紫外光実験施設BL7U)が本年度12月に完成した。このビームラインではアンジュレータからの高強度準単色光を直接Si基板表面に照射し、基板表面上で生じる変化をSTMにより原子レベルで観察できる。このビームラインの設計・性能に関して8th International Conference on Synchrotron Radiation Instrumentationにおいて報告を行った。 Si基板上酸化膜への放射光照射に先立ち、より単純な系である水素吸着Si(111)表面を用い実験を進めた。放射光照射前の表面においても詳しく調べ、水素吸着Si(111)表画上のrest-atom monohydrideが室温の水素照射によりエッチングされることを見いだした。また、放射光照射後では、放射光照射励起による吸着水素の脱離と考えられる現象が観察された。この結果は来年度7月に行われる14th International Conference on Vacuum Ultraviolet Radiation Physicsにおいて報告する予定である。
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