1.現在シリコンプロセスラインで問題視されている遷移金属元素を高感度検出することを目的とし、評価用試料作成および試料測定環境の整備を行った。 (1)故意にシリコン中に金属不純物元素を拡散する専用熱処理炉を製作した。熱処理後の試料を急冷却する必要性から、当初予定していた閉管式のものではなく開管式熱処理炉を採用し、冷却速度毎秒-100℃以下の性能が得られた。本年度では、特にステンレス配管の主材料であるFe不純物をシリコン中に故意に拡散した試料を作成した。 (2)上記Fe不純物拡散試料にフォトキャパシタンス測定を適用した結果、非常に明瞭なFe不純物に固有のフォトキャパシタンススペクトルが検出された。特にn型シリコン中では非常に深いエネルギー準位を形成することが確認されており、この準位は他の従来測定技術では観測が難しいことから、フォトキャパシタンス測定を極微量不純物検出に適用することの有用性、優位性が示されている。 2.フォトキャパシタンス測定装置に高精度・高安定容量計を導入することと、更に装置本体および測定試料の温度安定性向上を図ることにより、従来装置と比較して約1桁の感度向上が達成された。 3.研究目的に記載されていない派生的な結果として、シリコン中のFe不純物が形成する準位を「キャリアライフタイムキラー」として応用する可能性を見出した。従来用いられている重金属によるキャリアライフタイムキラーと比較して、抵抗率の増大効果が少ないために有望な手法であることが確認された。 15年度は他の遷移金属などの不純物元素についても同様な測定を継続するとともに、改良型フォトキャパシタンス測定装置の感度を定量評価する予定である。
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