研究概要 |
本年度は、20nm以下の粒子径を持つ単分散金属酸化物強誘電体ナノ粒子の作製を行った。Nd : YAGレーザの2倍波と3倍波(波長がそれぞれ532nmと355nmである)を利用し、金属酸化物強誘電体材料のセラミックターゲットを酸素雰囲気中でレーザアブレーションし、発生したナノ粒子を気相中で分散したままオンラインで電気炉に通すことで、レーザアブレーションにより発生したナノ粒子を結晶化する作製方法を開発した。実験では、主に、産業的にもっとも重要とされている強誘電体材料、Pb (Zr, Ti)O_3(以後、PZTと呼ぶ)を重心に行った。PZTターゲットを約3Torrの低圧酸素雰囲気中で、レーザパワー密度を0.5〜12GW/cm^2の範囲で変化させながらレーザアブレーションし、生成したナノ粒子を電気炉の温度を室温から1000℃まで変化させ熱処理を施した。レーザアブレーションの条件と熱処理温度の変化によるナノ粒子の形状と結晶構造の変化を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて調べた。熱処理のなかったナノ粒子は、無定形の形状をしており、その結晶構造は主にアモルファスである。これに対して、約600℃以上の熱処理を施した粒子では、その形状が球形となり、さらに、その結晶構造が温度の上昇につれ、パイロクロアからペロブスカイト結晶構造へと変化していた。約900℃の熱処理により、完全なペロブスカイト構造を持つ球形のPZTナノ粒子が作製できることがわかった。つぎに、レーザアブレーションと熱処理により作製したペロブスカイト構造のPZTナノ粒子を、ナノ粒子の粒径選別ができるDMA (Differential mobility analyzer)へ通し、粒径別に粒子を分級する方法を用い、平均粒径約7nmの有する単分散(粒径の分散度が平均粒径の約5%)のPZTナノ粒子の作製に成功した。今後、粒径7nm〜15nmの単分散PZTナノ粒子の詳細な結晶構造とその強誘電特性を調べようとしている。
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