本研究は、微小間隙相互作用回路を用いた光と電子ビームとの相互作用を理論及び実験的に明らかにし、光領域で動作する新たな小型電子ビーム装置開発のための基本特性を得ることを目的としている。 本年度は、先ず、波長1ミクロン帯の実験に用いる微小間隙相互作用回路の製作を行った。 電子ビームガイド用の溝をシリコンの異方性エッチングにより形成し、集束イオンビームを用いてシリコン表面上に幅1ミクロン以下の微小間隙を作製した。また、電子ビーム、レーザ光、微小間隙回路のアライメントを真空中で行うための高精度マニピュレータを設計し、製作した。 一方、FDTD法を用いた間隙上の電磁界解析、及び電子ビームとのエネルギー授受の理論解析を推し進め、間隙を多段化した場合に、僅か数本程度で周期構造として電磁界分布の解析を簡略化することが可能であることが確認された。(5本で一次ピーク値の誤差が5%程度)また、スリット溝、スロット溝、V溝、矩形溝、等々の種々の形状について幅や溝深さを変化させて解析を行い、矩形溝を用いた場合に他と比較して倍程度のエネルギー授受が得られることが確認された。 以上の解析結果を基に、矩形の回折格子を作製し、波長10.6ミクロンの炭酸ガスレーザを用いて相互作用実験(逆スミス・パーセル効果)を行い、場との同期条件を満たす電子速度で現れる3次までのエネルギー授受量のピークを実験的に確認した。これは現段階における最短波長での逆スミス・パーセル効果の実験結果である。
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