圧電薄膜を利用したバルク波ワイヤレスセンサに関する研究において、本年度は、高速焼成炉を用いることによるPZT圧電薄膜の特性改善と、電極材料の探索について詳細な検討を行なった。 ゾル-ゲル法によるPZT薄膜の成膜において、焼成時の下部電極の劣化が大きな問題となっていた。また、加熱および冷却時に生ずる相転移のため、PZTが劣化することが知られている。そこで、高速焼成炉を用いることで、急速加熱及び冷却を行ない、これらの問題の解決を試みた。この結果、高速焼成を行なうことにより、従来よりも下部電極の劣化を気にすることなく、焼成が可能となることがわかった。また、ここで得られたPZT薄膜の圧電性が、従来法によるものに比較して同等であることを明らかにした。現在、さまざまな条件下で焼成を行ない、高速焼成炉を用いた場合の最適焼成条件について検討を行なっている。 これと並行して、電極材料の検討についても行なった。この際、副次的な成果として、反射器を用いるSAWデバイスに対して銅電極の適用が有効であることを明らかにした。質量密度が高く、スティフネスの大きな銅の特徴を利用するとSAW速度の低下を比較的小さくしたまま、非常に大きな反射率が得られる。これを、理論と実験により確認し、銅電極のSAWデバイスへの有用性を明らかにした。また、この際リフトオフ法による平易な微細銅電極の作製方法についても検討を行なった。この成果は、従来型の受動型SAWワイヤレスセンサへの応用等も可能であると考えられる。 これらの成果をもとに、バルク波ワイヤレスセンサの実現に向けた検討を引き続き行なっている。
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