庄電薄膜を利用したバルク波ワイヤレネセンサの実現にあたり、本年度は、トランスポンダ部のシミュレーションおよびセンサの全体構成方法を中心として検討を行なった。更に、本提案システムでも使用可能なほど超広帯域なGHz帯における初段フィルタの検討も併せて行なった。具体的な検討結果は以下に示す通りである。 まず、トランスポンダ部について詳細な数値シミユレーションを行なったところ、電極構造にもよるが、圧電薄膜としてZnOを利用した場合でも3GHz帯において、3%程度の周波数偏移が実現可能であることを確認した。PZTを用いれば更に大きな周波数偏移を実現できるが、本年度は加工性の良いZnO薄膜を用いてセンサの構成を試みた。 センサ構成については、張合わせ法による多層膜構造の実現を検討した。しかし、この方法では接着層でのインピーダンス不整合による反射が大きく、実用的でないことが確認された。現在引き続きスパッタ法によるセンサ構築を検討している。 トランスポンダ構成の検討にあたっては、システム構成上、必要不可欠と考えられる超広帯域なRFフィルタの実現を中心として検討を行なった。その結果、銅電極と15°YX-LiNbO_3基板を組合わせた構造で、Love波を利用することにより、3dB比帯域幅が20%に達するようなフィルタの試作に成功した。これらの結果を利用し、トランスポンダにPZT薄膜を利用した場合でも十分に追従できる高周波処理部の検討を引き続き行なっている。
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