スパッタ法で作製したSmCo合金薄膜を用いて次世代の超高密度磁気記録媒体の開発を目指した。本年度は、まず、長手方向の磁気記録媒体として基板加熱しながら作製したSm-Co/Cr薄膜のCr下地層の作製条件およびSm組成依存性について検討を行った。250℃で作製したとき、Cr下地層が(001)面に配向するとともにSmCo_5(110)面からの回折線が観察され、Cr下地層上にSm-Co層がヘテロエピタキシャル成長していることがわかった。Sm組成依存性について検討した結果、SmCo5(110)面からの回折線は約11at.%から20at.%の範囲で観察され、同時に10kOe程度の保磁力が得られた。TEM観察によってCr層およびSm-Co層中の粒子サイズは約40nmであり、磁性層中の粒子サイズをさらに微細化するためにはCr下地層の粒子を微細化する必要があると考えられる。Sm-Co層厚依存性について検討した結果では5nmと極薄層厚において3kOe以上の保磁力を示し、現在、磁気記録媒体として用いられている薄膜よりも優れた特性を持つことを明らかにできた。 また垂直磁気記録媒体用としてSm-Co/Cu薄膜の試作研究をおこなった。Cu下地層の作製条件を変化させたときの結晶構造と磁気特性について検討した結果、Cu下地層を基板加熱なしで作製しSm-Co層を300℃で作製した場合、結晶構造および磁気特性が良好であることがわかった。Cu(111)面に配向するとSmCo_5(001)面からの回折線が観察され、このとき垂直磁気特性を示した。Cu下地層がSm-Co層作製時の加熱によって粒子サイズが増大するため、粒子サイズの抑制という課題が残ったが、10nmのSm-Co層厚であっても垂直方向の保磁力が7KOe以上あることがわかった。 以上から、高保磁力を有するSm-Co薄膜を比較的低温(250〜300℃)で作製し、さらに配向性を制御することができた。また磁気特性から次世代の記録媒体やマイクロ電子デバイスとしてSm-Co薄膜が大変有望であることを明らかにできた。
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