スパッタリング法でSm-Co薄膜を作製し、次世代の超高密度磁気記録媒体の開発を目指した研究をおこなった。平成14年度はCu下地層を用いることにより垂直方向に磁化容易軸を有するSm-Co薄膜が形成できることを明らかになったので、平成15年度はCu下地層の結晶構造がSm-Co/Cu薄膜の磁気特性に及ぼす影響について検討した。具体的にはCu下地層作製時の基板温度、スパッタリングガス圧、下地層厚を変化させたときのSm-Co層の結晶構造ならびに磁気特性について検討した。Cu下地層作製時の作製条件を変化させ(111)面への配向度を向上させるとSmCo_5(002)面の回折線強度が増加し、Cu(111)面とSmCo_5(002)面のロッキングカーブの半値幅を比較することにより、Cu(111)面上にSmCo_5(002)面がエピタキシャル成長していることを明らかにできた。またCu(111)面の回折線強度の増加とともにSm-Co/Cu薄膜の垂直方向の保磁力が増加し、垂直磁気異方性を増加することができた。さらにSm-Co層厚について検討した。Sm-Co層厚を10nmから40nmに増加すると、SQUIDで測定した異方性磁界は約60kOeから170kOeに増加し保磁力は約8kOeから12kOeに増加した。最大異方性磁界値はバルク値(250kOe)の約70%に相当するので、垂直磁気記録媒体のみならずマイクロ・ナノ電子デバイスとして有望であると推察される。今後の課題として面内方向にヒステリシス曲線が残留していることが挙げられる。これはCu下地層の(111)面への不完全配向やSm-Co層作製時の基板加熱によるCu粒子の凝集によってSm-Co層内部のc面が基板面に対して傾くと推測している。この課題を解決するためCu下地層と同様なfcc構造をもち高融点材料を下地層として試みる必要がある。
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